我が国にこれほどまでにフォークギターを普及させた第一人者ともいえる石川鷹彦プロデュースによる、茶木みやこの新譜。そのアレンジは絶妙で過不足がまったくない。弾き過ぎず消えすぎず、茶木みやこのボーカルをベストポジションで支えている。70年代初頭にデビューした、当時のピンクピクルスを知る者としては、フォークソングの原点を示したうえで、なおかつ奥行きを増した音づくりが成功しているのがうれしい。古いファンにも、新しいファンにも充分に応えてくれる仕上がりだ。還暦を過ぎた茶木の、肩の力がいい具合に抜けた、今こそ自由なのだと歌う歌詞は自然で軽快だ。ベテラン下田逸郎と、お互いの留守番電話で共作したという「
紅・くれない」は、シルエット越しに見る大人のラブソング。下田の持ち味である妖艶な言葉使いと茶木の感性がしっとりと組み合わさった新しい世界だ。全国を旅するライブツアーで生まれた歌たちはまさしく今の茶木みやこであり、無理をせず、聞き手と同じ歩調を思わせるスピード感だ。ラスト・トラックの「一人の道」はNewアレンジによるものだが、2001年以降にリリースされた3枚のアルバムには収録されていなかったため、待ち望んでいたファンも多いことだろう。やはり、この曲は茶木を全国的に認知させた代表曲のひとつに違いなく、発表から40年を経た今も、行く先々で出会う人たちとの接点ともいえる。そういう意味でこの曲は特別な1曲だ。石川鷹彦の飾り気のないシンプルなギターワークが心地いい。
11曲から19曲まではオリジナルのLPには収録されていない
ボーナストラックなのですが、茶木みやこさん唄の「あざみのごとく棘あれば」や「まぼろしの人」など、懐かしい古谷一行さん主演のテレビドラマシリーズエンディング曲を聴くことが出来ます。