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巨人と玩具 [VHS]
高度経済成長、大量消費社会。あの浮ついた時代に増村が決別を告げる。
ここに象徴される「巨人」とは社会、「玩具」とは即ち我々である。我々「玩具」は社会「巨人」のスピードに飲まれその呪縛から逃れることはできない。しかしここにはどんなスピードにもブレることのないカメラ「視点」が存在する。ツバくらい吐きかけてやればいい、しかし卑屈になるな。あまりにも早すぎた作品である。

 

開高健~河は眠らない~ [DVD]
今年で小説家の開高健さんが亡くなって20年になる。それを記念して文芸春秋から写真集「河は眠らない」が発売された。
そのベースになったのが同名のビデオで、同じ釣りマニアの写真家・青柳陽一さんが口説いて実現した初のムービーだった。
VHS時代が終わり、液晶テレビ購入を機にビデオレコーダーとテープも処分してしまったが、写真集の発売に合わせて書かれたスポーツ紙の特集記事を読んで、DVD化されているのを知り、アマゾンで検索して買ったのである。
「河は眠らない」も開高さんの著書の一つだが、アラスカで巨大なキングサーモンを釣る映像は釣り師なら誰でも夢見るストーリーだ。
昔から釣り方などを明かすハウツービデオは多数あったが、この作品はそれらとは一線を画す開高イズムにあふれた名作である。
入手できるとは思わなかっただけに、開高さんには失礼かもしれないが旧知の友に再会できたような気持ちにさせてくれた。

 

輝ける闇 (新潮文庫)
開高健を、ただの釣り好きの美食家のように思われているとしたら、本書はその認識を根本的に転換すること間違いなし。

ベトナムという地で、遠く1975年まで戦争が行われていたことを、今は忘れてしまっているとしても、まるでその場にいるかのような圧倒的な臨場感が吹き飛ばしてしまうような、臭いが、音が聞こえてくるようなリアリティーを持つ作品。

開高健が好きなら決して外せない、ベトナム戦争に興味があるなら極めつけにお勧め。まして両方なら、決定的にお勧めです。

 

ベトナム戦記 (朝日文庫)
 1954年生まれのレビュワーにとっては、「ベトナム戦争」として報じられる戦況の後半部分に意識があるが、前半は、正直言うと「なんでアメリカがあんなところで戦争してるの?」という感じであった。
 世の中には、アメリカに留学した小田実さんらの「ベ平連」が盛んにデモをしているのが思い出される。
 この時点で、私の知る開高健さんは、山口瞳さんの先輩で、魚釣りの好きな人、お酒を飲む大食漢でしかなかった。この人が何ゆえにベトナムまで行くのかは、中学生の小生には理解不能であった。

 高校になって読み、大学になって読み、社会人になって読んだ時にベトナム戦争の帰趨とか、その後のカンボジアの情勢や更には共産国家の終焉などの様々な別の情報が入っていて、彼の文章は素直に受け入れられなかった。

 しかし・・・・ここから怒られるかもしれないけれど、ひょっとして、開高健さんは、「文豪」とか「社会評論」とかのややこしいことではなく、『ライズ』のくりかえされる浅瀬にフライを飛ばすフライフィッシングの場所としてとらえたのではないかと思えてきた。命がけのフライの操作ではあったが。
 そう考えると妙に分かりやすいのですが、いかがでしょう?


 


サントリー 開高健B


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